
「腰痛や椎間板ヘルニアがあるのに、筋トレしても大丈夫なの?」
そんな不安を抱えている方は少なくありません。間違ったやり方でトレーニングすれば、たしかに悪化のリスクもあります。
しかし実は、正しい方法で行えば、筋トレは腰痛・ヘルニア改善の第一歩となる有効な手段です。
本記事では、柔道整復師・鍼灸師・NASM-PES(パフォーマンススペシャリスト)の資格を持つ筆者が、医学的根拠と現場経験に基づいた安全で効果的な筋トレの始め方を徹底解説します。
● なぜ筋トレが腰痛・ヘルニアに効くのか?
● 自宅でできるおすすめメニューとは?
● やってはいけないNGトレーニングとは?
● 筋トレを生活習慣にする5ステップ
この記事を読めば、腰痛やヘルニアがあっても安心して筋トレを取り入れ、痛みの改善と再発予防に向けて前向きに行動できるようになります。
なぜ筋トレが腰痛・ヘルニアに効果的なのか?

腰痛や椎間板ヘルニアがあると、「動かさないほうがいい」と思われがちですが、実は正しい筋トレは症状の改善と再発予防に大きな効果をもたらします。
その理由は、筋トレによって体幹の安定性が高まり、腰椎にかかる負担が軽減されるからです。さらに、姿勢が整い、血流が改善されることで、組織の修復力も高まります。ここでは、筋トレが腰痛・ヘルニアに与える具体的な効果を4つの観点から解説します。
腹圧と体幹を強化して腰椎への負荷を減らす
腰痛や椎間板ヘルニアを改善するには、体幹の安定性を高めることが欠かせません。特に腹横筋や多裂筋など、背骨を支える筋肉を鍛えることで、腰椎の過剰な動きを抑え、痛みの発生を予防できます。
体幹トレーニングとして代表的なドローインやプランクは、腹圧を高めて脊柱を安定させる効果があります。これにより、痛みの原因である「椎間板」や「神経根」へのストレスが分散され、症状の悪化を防ぎながら、回復をサポートします。たとえば、朝起きるときの腰の痛みが軽減したり、長時間のデスクワークでも疲れにくくなる効果が期待できます。
姿勢の改善が慢性的な腰痛を予防する
腰痛の根本的な原因には、猫背や骨盤の歪みなど、姿勢不良が深く関与しています。筋力トレーニングによって体幹や殿筋群を鍛えると、骨盤が正しい位置に安定し、自然と正しい姿勢を保ちやすくなります。
姿勢が整えば、腰椎への負担も軽減し、慢性的な腰痛の予防につながります。これは再発リスクの軽減にも効果的です。たとえば、座っているときに背筋が自然と伸びるようになり、日常生活での姿勢保持が楽になります。
血液循環と自己回復能力の促進をもたらす
筋トレを行うことで筋肉のポンプ作用が働き、血流が促進されます。血行が良くなると、炎症物質の排出が進み、栄養が患部に行き渡るため、組織の修復がスムーズになります。
さらに、筋トレによって身体の柔軟性が増し、関節の可動範囲の拡大にもつながります。その結果、痛みの緩和と体内の自然回復力の向上が期待できます。たとえば、前屈や立ち上がり動作がスムーズになることで、日常動作が快適になります。
薬や湿布に頼らない体を作れる
正しく筋トレを継続することで、痛みの出にくい体が手に入ります。自然治癒力が高まるため、薬物や湿布に依存しない生活が可能になります。
また、自分自身で体の状態をコントロールできるようになるため、再発の不安も軽減され、精神的な安心感にもつながります。結果として、通院回数や医療費の削減にもつながるケースがあります。
自宅でもできるおすすめ筋トレメニュー

「腰痛や椎間板ヘルニアがあっても筋トレはできる」と言われても、実際にどんなトレーニングを、どこから始めれば良いのか分からないという方は多いものです。
そこでこの章では、柔道整復師・鍼灸師・NASM-PESとしての視点から、腰痛・ヘルニアの回復期〜慢性期にかけて自宅で安全に行えるおすすめ筋トレメニューをご紹介します。
✔ 静かな部屋とマット1枚でOK
✔ 器具なし/初心者OK
✔ 1日3〜5分から始められる
まずは、症状の程度に合わせて、無理のないところから取り組んでいきましょう。
椎間板ヘルニア初期〜回復期のトレーニング例
ヘルニアの痛みが落ち着いてきたら、体幹をゆっくり目覚めさせるようなトレーニングが効果的です。
- ドローイン
仰向けで膝を立てた状態から、お腹をへこませるようにゆっくりと腹横筋を収縮させます。
これは腰椎の安定に不可欠な筋肉を活性化する、最も基本的で安全なエクササイズです。
- プランク(膝付きOK)
うつ伏せから前腕と膝をついて体を浮かせ、体幹を一直線にキープします。
腰を反らせず、腹圧を保ちながら30秒を目安に挑戦しましょう。
- バードドッグ
四つん這いの姿勢から、対角線上の手足(右手×左脚など)をゆっくり伸ばす運動。
姿勢制御と脊柱の安定性を高めるトレーニングとして理学療法の現場でもよく使われます。
POINT:これらの運動は1日3〜5分程度からOK。これらのエクササイズは床の上でマットが1枚あれば実践でき、朝や夜の習慣として取り入れるのもおすすめです。
慢性腰痛の人向けの筋力アップ種目
痛みが落ち着き、日常動作も問題ない方は、さらに体幹と下半身の筋力を高める種目に移行しましょう。
- バックエクステンション
脊柱起立筋を刺激し、腰を支える筋力をアップします。反動を使わず、「上げすぎない」ことがポイントです。
- スクワット(軽負荷)
イスを使って深くしゃがみすぎずに行うことで、膝や腰への負担を最小限に抑えながら、大腿部や殿筋群を強化できます。
- ヒップリフト
仰向けで膝を立て、お尻をゆっくりと持ち上げる動作。骨盤周辺の安定化と姿勢保持筋の強化に効果的です。
週2〜3回、10〜15回×2〜3セットを目安に行うことで、筋力アップと安定性の向上が見込めます。筋肉痛がある場合は休息も忘れずに。
注意すべきNG筋トレ例(悪化のリスクあり)
以下のような動作は、椎間板や神経への過剰な圧迫や剪断力(ずれる力)を生みやすく、症状の悪化リスクがあります。
- 高重量のバーベルスクワットやデッドリフト
- 腰を大きく反らすような腹筋運動(例:足上げ腹筋で腰がそる)
- 反動を使った高負荷トレーニング(勢いのあるジャンプやバーベルスイングなど)
- 股関節の屈曲ができていないまま行うスクワット(腰で曲げるNGフォーム)
- 膝が内側に入るようなスクワット(ニーイン)
アドバイス:これらのフォームはジム初心者にありがちです。不安がある場合は、必ず専門家にチェックしてもらいましょう。
「筋トレすると悪化するのでは?」という疑問に答えます

「筋トレをしたら、かえって腰痛やヘルニアが悪化するのでは…?」
このような不安は非常に多くの方が抱いている、もっともな疑問です。
たしかに、誤った方法で筋トレを続けてしまうと、腰に負担をかけてしまい、かえって症状を悪化させてしまうこともあります。しかし、正しい方法・姿勢・負荷設定で行えば、筋トレはむしろ症状改善と再発予防の強力な武器になります。
ここでは、実際によくある3つの不安に対し、国家資格保持者の視点から解説していきます。
痛みを感じたら→即中止するのが大前提
最初に強調したいのは、痛みを感じたらすぐに運動を中断することです。
痛みは、筋肉や神経、関節が「これ以上は危険」と知らせる体からのサイン。そのまま無理に続けると、炎症や損傷が悪化する恐れがあります。
たとえば
・トレーニング中に腰がズキっとした
・翌日から痛みが強くなった
こういった場合は、すぐに休養を取り、必要に応じて医師や専門家に相談しましょう。無理をせず、痛みが出ない範囲で行うのが筋トレ継続のコツです。
正しい姿勢・呼吸・負荷設定で効果的に行える
安全で効果的な筋トレには、フォーム・呼吸・負荷の3要素が欠かせません。
- 正しいフォーム:腰を反らしすぎず、背骨をニュートラルに保つ
- 適切な呼吸法:腹圧を高める腹式呼吸を意識
- 段階的な負荷設定:最初はちょっと物足りないくらいでOK
フォームが崩れると、狙った筋肉ではなく腰に余計なストレスがかかり、トラブルの原因になります。
鏡を使ってセルフチェックしたり、スマホで撮影して客観的にフォームを見直すのも非常に有効です。
整体・リハビリと組み合わせることで予防的にも有効
筋トレだけに頼らず、整体・ストレッチ・リハビリとの併用で効果はさらに高まります。
たとえば、以下のような効果が期待できます:
筋トレは、整体などのボディケアと組み合わせることで、より高い効果が期待できます。可動域の改善や筋肉のバランス調整、神経系へのアプローチを併用することで、再発予防につながります。
総合的なケアを意識することが、長期的な健康維持には欠かせません。定期的な身体のチェックと修正を行うことで、再発のリスクを下げながら安全に筋トレを続けられるようになります。
筋力トレを日常に組み込む5つのステップ

「腰痛やヘルニアを改善するには筋トレが良い」と分かっていても、
「どこから始めたらいいのかわからない」「続けられるか不安」
そんな方も多いのではないでしょうか?
そこでここでは、腰痛やヘルニアを抱える方のための安全で効果的な筋トレ導入5ステップを、国家資格を持つ筆者の視点からご提案します。
ステップ①:医療機関で症状をチェック(画像診断含む)
MRIやX線などの画像診断を通して、椎間板の変性や神経根への圧迫の有無を確認しましょう。
医師に「運動しても大丈夫か」「避けるべき動作はあるか」などを確認してから始めることで、安心して進められます。
ステップ②:リハビリや整体でベースを整える
痛みが強い時期に無理をして筋トレを始めると、逆に腰痛を悪化させることがあります。
まずはリハビリ・整体・ストレッチを通して、筋肉の緊張を取り、体の歪みをリセットすることが大切です。
- 関節可動域の改善
- 筋肉の硬さの左右差の修正
- 疲労の回復
など、筋トレの準備が行えます。
ステップ③:ストレッチ+軽負荷トレーニングから開始
強い痛みが無くなった、もしくは少し違和感があるくらいから、いよいよ運動を再開するフェーズです。
この段階では以下の3つがポイントです。
・ストレッチ
筋肉の緊張を緩め、可動域を広げる。特に腰背部、股関節周囲、太もも裏(ハムストリング)を中心に行うと効果的。
・軽負荷の筋トレ
プランク・ドローイン・ヒップリフト等、自重で行う体幹トレーニングを中心に、痛みのない範囲で始めましょう。
・呼吸法の習得
腹式呼吸を意識することで腹圧が高まり、体幹の安定性が増します。フォームと同じくらい「呼吸」は重要です。
このフェーズでは「正しく動けているか?」が何より大切です。フォーム確認をしながら、「質」を意識して取り組みましょう。
ステップ④:正確なフォーム習得+週2〜3回の継続
フォームの習得が進んできたら、次は習慣化の段階です。
週2〜3回の頻度で、無理のない範囲からスタートして継続することを意識しましょう。
トレーニング記録を残すのも非常におすすめです。
「どの種目をどれくらいやったか」「調子はどうか」などをメモすることで、モチベーションや進歩の見える化につながります。
継続することで、筋力や柔軟性は確実に向上し、腰痛の軽減にもつながります。
ステップ⑤:負荷を徐々に増やしつつ腰痛・ヘルニアの再発防止
筋トレに慣れてきた段階で、少しずつ負荷を高めていきましょう。スクワットの回数を増やす、プランクの時間を延ばす、チューブなど軽器具を導入するなど、少しずつレベルアップしていきましょう。
この段階で意識すべきポイントは以下の3つ
- 体幹の安定性を維持しながら動作できているか
- 疲労や違和感が翌日に残っていないか
- フォームが崩れていないか
また、ストレッチも引き続き行うことで柔軟性を維持し、再発予防に効果を発揮します。
まとめ|筋トレで腰痛・ヘルニア改善の一歩を踏み出せる

「腰痛や椎間板ヘルニアがあるのに、運動なんてして大丈夫?」
そんな不安を感じている方は少なくありません。かつては「安静第一」が常識でしたが、近年の医学的知見では、適切な筋トレが症状の改善と再発予防に非常に効果的であることが明らかになっています。
つまり、腰痛やヘルニアがある方にとって、筋トレは禁止すべきことではなく、正しく行えば「改善の第一歩」になるのです。
ここでは、筋トレを安全かつ効果的に取り入れるために必要な3つの視点をお伝えします。
①正しい知識と段階的な実践がカギ
筋トレが腰痛やヘルニアに良いとはいえ、自己流や見よう見まねで始めるのは非常に危険です。
解剖学や運動学に基づいた正しい知識がなければ、負担のかけ方を誤って症状が悪化するリスクもあります。
たとえば、「スクワットはいい」と聞いて、深くしゃがみ込むフォームを無理に真似すれば、椎間板や神経根への圧迫がかかる可能性も。
そのため、筋トレを始める前に、お医者さんやトレーナー、トレーニングに精通した柔道整復師や理学療法士などの専門家に相談し、段階的に進めるステップを理解してから取り組むことが大切です。
②トレーナーのサポートで確実に継続できる環境作り
継続的に効果を出すには、正しいフォーム・適切な負荷・適度な頻度を守ることが重要です。
これは自己判断では難しいため、やはりプロのサポートを受けながら進めるのが最も安全で効果的です。
たとえば、整体やストレッチを組み合わせることで、
- 可動域の制限を解消
- 筋バランスを整える
- 神経系の働きをスムーズにする
など、筋トレ単体では補えない効果も得られます。
現場では「筋トレ+整体」の併用で腰痛が大きく改善したケースも多く、多角的なアプローチがカギになります。
③「腰に不安があるから運動しない」はもう時代遅れ
近年の研究では、単なる安静よりも「適切に設計された運動」が腰痛やヘルニアの回復に効果的であることが示されています。筋トレによって腰周囲の筋力が強化されると、痛みが改善し、日常生活も快適になります。
健康を維持するためにも、現代においては筋トレを日常生活に取り入れることが推奨される時代なのです。
かつては「安静にしていれば治る」という考え方が主流でしたが、現在の研究では『運動療法』の有効性が明確に示されています。
特に体幹の深層筋(腹横筋、多裂筋)を鍛えることで、腰椎の安定性が高まり、痛みの根本的な原因にアプローチできます。
適切に設計された筋トレは、
- 痛みの軽減
- 再発の予防
- 日常生活の快適化
につながり、「動かさないほうがいい」という常識を覆す回復戦略なのです。