
「湿布を貼っても、マッサージしても腰痛がよくならない…」そんな悩みを抱えていませんか?
実は、腰痛の原因が腰そのものではなく、骨盤を支える「内転筋」の弱さにあるケースは少なくありません。
内転筋が衰えると、骨盤が不安定になり、腰に余計な負担がかかるのです。
この記事では、柔道整復師の視点から、腰痛の根本原因と向き合いながら、自宅で簡単にできる「内転筋トレーニング」を5つ厳選してご紹介します。
運動が苦手な方や初心者でも無理なく取り組める内容なので、ぜひ今日から腰にやさしい習慣を始めてみてください。
結論|腰痛対策には内転筋の筋トレが有効
「腰が痛い」と感じたとき、多くの人は腰そのものに原因があると考えがちです。
しかし、実際には骨盤や股関節を支える筋肉、特に内転筋の筋力低下が、腰に負担をかけているケースが多く見られます。
腰痛の根本改善には、内転筋を適切に鍛えることが非常に効果的です。
ここでは、その理由と効果についてわかりやすく解説します。
内転筋が弱ると骨盤が不安定になり腰痛が起こりやすくなる
内転筋は、太ももの内側に位置する筋肉群で、脚を閉じる動きや骨盤の安定に大きく関わっています。
これらの筋肉が弱くなると、骨盤が左右にブレやすくなり、その結果、腰椎にも不安定な動きが生じてしまいます。
とくにデスクワークや運動不足が続くと、無意識のうちに内転筋が衰えて、骨盤の傾きや姿勢不良を引き起こしやすくなります。
骨盤が安定しないまま生活を続けることで、慢性的な腰痛へとつながるリスクが高まるのです。
腰痛を改善したいなら内転筋を鍛えるのが近道
腰痛対策というと、腹筋や背筋ばかりが注目されがちですが、実はそれだけでは十分とはいえません。
なぜなら、体幹を正しく支えるためには、骨盤周囲の筋肉とのバランスが欠かせないからです。
なかでも内転筋は、股関節の安定性や脚の軌道に大きく関与するため、歩行や立位姿勢にまで影響します。
内転筋を強化することで、骨盤のぐらつきが減り、腰への負担が軽減され、痛みの出にくい身体をつくることができます。
腰痛を根本から改善したいなら、内転筋へのアプローチは欠かせません。
腰を守る「内もも筋トレ」は運動初心者でも実践できる
「筋トレ」と聞くと、重い器具や特別な設備が必要と感じる方も多いかもしれません。
しかし、内転筋のトレーニングは、自宅でも簡単に、しかも無理なく行える種目が豊富です。
たとえば、ボールを挟んで内ももを締める運動や、足を閉じながらのヒップリフトなど、床に寝たままでも実施可能なエクササイズがあります。
正しいフォームと呼吸を意識すれば、筋トレ初心者や運動が苦手な方、高齢者の方でも安心して取り組めます。
継続することで、日常生活での安定感や姿勢改善も実感できるでしょう。
理由|なぜ内転筋の筋トレが腰痛に効くのか?
腰痛の根本改善には「内転筋の筋トレ」が効果的とされていますが、それには明確な理由があります。
内転筋は、骨盤や股関節を安定させる役割を担っており、体幹と下肢をつなぐ連動役としても重要です。
また、内転筋がしっかり働くことで、歩行や立位姿勢が整い、腰への負担を軽減することが可能になります。
ここでは、解剖学的・運動学的な観点からその理由を詳しく解説します。
内転筋は骨盤を支える「姿勢筋」だから
内転筋は、大腿骨と骨盤をつなぐ筋肉群で、脚を閉じる動きだけでなく、骨盤の安定化にも大きく関与しています。
立位姿勢では、内転筋が左右の骨盤のバランスを保ち、体幹の中心軸を支える「姿勢筋」として機能します。
もしこの筋肉が弱まると、骨盤が傾きやすくなり、結果として腰椎のアライメント(配列)が崩れ、腰に過度なストレスがかかる原因になります。
つまり、内転筋が弱いままでは、どれだけ体幹を鍛えても安定性に欠け、腰痛のリスクは下がりません。
中臀筋・腸腰筋・内転筋は体幹と下肢の連動役
腰の安定には、単体の筋肉ではなく「連動性」が重要です。
中臀筋(ちゅうでんきん)は骨盤の外側、腸腰筋(ちょうようきん)は腰椎から大腿骨にかけて、そして内転筋は内ももに位置します。
これら3つは骨盤を挟むように配置され、互いにバランスを取りながら働いています。
このうち一つでも弱化すると、他の部位が代償的に働くことになり、負担が腰に集中してしまいます。
内転筋を鍛えることで、これらの連動性を高め、動作時の腰部への負荷を分散させることができるのです。
内転筋の活性化で正しい歩行・立ち姿勢が可能に
歩行時に「内また」や「ガニ股」になりやすい方は、内転筋が正しく働いていない可能性があります。
内転筋は股関節を内側に引き寄せる動きを担っており、足をまっすぐに出す歩き方や、骨盤を水平に保つ立ち方に重要な役割を果たします。
内転筋がしっかり働けば、脚の動きが安定し、骨盤が左右に揺れにくくなります。
その結果、背骨や腰椎にも余計なねじれが生じず、腰痛の予防や改善につながるのです。
日常の姿勢を変えたいなら、内転筋から整えるのが効果的です。
論文で示された内転筋の重要性(出典付き)
内転筋の重要性は臨床研究でも明らかにされています。
たとえば、2020年に発表された研究では「慢性腰痛患者は健常者に比べて股関節内転筋力が有意に低下していた」と報告されています(出典:PubMedID:32267871)。
この研究では、内転筋の筋力低下が骨盤の不安定性を生み、それが腰部の痛みに直結している可能性があると示唆されています。
科学的根拠のあるトレーニングこそが、再発を防ぐ本質的なアプローチとなるのです。
実践|腰痛改善に効果的な内転筋トレーニング5選
内転筋を鍛えることで、骨盤のぐらつきが減り、腰への負担を根本から軽減できます。
ここでは、腰痛に悩む方でも無理なく実践できる「内転筋トレーニング」を5つご紹介します。
すべて自宅で簡単にできる内容なので、運動が苦手な方や初心者でも安心して取り組めます。
トレーニング比較表(目的・難易度・推奨回数・体勢など)
種目名 | 鍛えられる部位 | 難易度 | 回数の目安 | 姿勢 | 備考 |
ワイドスクワット | 内転筋+大臀筋 | ★★★☆☆ | 10回×2〜3set | 立位 | 股関節の柔軟性も必要 |
サイドレッグレイズ(内側) | 内転筋(下肢) | ★★☆☆☆ | 左右10回×2set | 横向き寝 | 脚の操作だけで内転筋を集中刺激 |
ボールサンド内転トレーニング | 内転筋全体 | ★☆☆☆☆ | 10回×2set | 仰向け | 呼吸と連動させるとより効果的 |
バランスボール内ももスクイーズ | 内転筋+体幹安定筋群 | ★☆☆☆☆ | 10回×2set | 椅子座位 | 高齢者や初心者にも安全 |
足閉じヒップリフト | 内転筋+臀筋群 | ★★☆☆☆ | 10回×2set | 仰向け | 腰痛予防・骨盤安定に効果大 |
①ワイドスクワット
ワイドスクワットは、太ももの内側(内転筋)とお尻(大臀筋)を同時に鍛えられる定番トレーニングです。
骨盤の安定性が高まり、腰にかかるストレスが軽減されます。
フォーム解説:
- 足を肩幅より広めに開き、つま先をやや外側に向けます
- 背筋をまっすぐに伸ばしたまま、ゆっくり腰を下ろします
- 太ももが床と平行になる直前で止めて、2〜3秒キープ
- 息を吐きながらゆっくり立ち上がります
- 10回×2〜3セットを目安に行いましょう
NG例:
- 背中が丸まっていると腰に負担がかかる
- 膝が内側に入るとケガのリスクが上がります
②サイドレッグレイズ(足を閉じる方向)
横向きに寝て下側の足を持ち上げる動きで、内ももにある内転筋を集中的に鍛えます。
股関節の安定や歩行のブレ軽減にも効果的です。
フォーム解説:
- 横向きに寝て、下の脚をまっすぐに伸ばします
- 上の脚を軽く前に出し、膝を曲げて床に置きます(バランス用)
- 下の脚をゆっくりと真上に持ち上げ、2秒キープ
- ゆっくり元の位置に戻します
- 左右それぞれ10回×2セット行いましょう
NG例:
- 勢いで足を上げると、内転筋ではなく他の筋肉に頼ってしまいます
- 上半身が前後に倒れると正しく負荷がかかりません
③ボールサンド内転トレーニング
膝の間にボールやクッションを挟んで力を入れることで、内転筋の「意識」と「使い方」が身につきます。
初心者でも安全に行えます。
フォーム解説:
- 仰向けに寝て、膝を立てます
- 両膝の間に柔らかいボールやクッションを挟みます
- 息を吐きながら、内ももでギュッと挟んで5秒キープ
- 息を吸いながらゆっくり力を抜きます
- 10回を1セットとして、2〜3セット繰り返しましょう
NG例:
- 呼吸を止めると腹圧が上がり腰に負担がかかります
- 足だけで挟むと、内転筋に効きません(太ももの外側が代償します)
④バランスボール内ももスクイーズ
椅子に座った状態で行うこのエクササイズは、内転筋と同時に体幹も刺激します。
腰への負担が少なく、初心者や高齢者にもおすすめです。
フォーム解説:
- 椅子に浅く座り、膝の間にバランスボールを挟みます
- 背筋を伸ばし、姿勢を正したまま内ももに力を入れます
- 息を吐きながら5秒かけてボールをしっかり挟みましょう
- 息を吸いながらゆっくり力を抜きます
- 10回×2セットを目安に
NG例:
- 背中が丸まっていると腰に負担がかかります
- 肩や顔が力んでしまうと内転筋への意識が弱まります
⑤足閉じヒップリフト
お尻を持ち上げるこの運動では、内転筋に加えて骨盤を支える臀筋群も鍛えられます。
腰痛予防と姿勢改善の両方に効果的です。
フォーム解説:
- 仰向けに寝て、膝を立てて足を閉じておきます
- 手は体の横に置き、リラックスしましょう
- 息を吐きながら、お尻をゆっくり持ち上げます
- 肩から膝までが一直線になった位置で2秒キープ
- 息を吸いながらゆっくり下ろします
- 10回×2セットが目安です
NG例:
- 腰を反らせて無理に上げると腰椎に負担がかかります
- 足が開いてしまうと、内転筋の効果が弱くなります
よくある質問(Q&A)
内転筋トレーニングに取り組むにあたって、よくある疑問をQ&A形式でまとめました。
実際の指導現場でも頻繁に聞かれる質問を中心に、国家資格をもつ専門家の立場から、シンプルかつわかりやすくお答えします。
Q.内転筋の筋トレは毎日やっても大丈夫?
回答:毎日は避けて、週2~3回がベストです。
筋肉はトレーニングによって刺激されたあと、休息と回復の過程で強くなります。
内転筋は普段あまり意識して使われないため、毎日行うと疲労が蓄積し、フォームの崩れや腰への負担につながることもあります。
無理なく継続するには「休む日」も重要です。
Q.内転筋が弱っているかどうか、自分でわかる方法はある?
回答:片足立ちテストで簡易チェックできます。
鏡の前で片足立ちをしたときに骨盤が傾いたり、体がグラつく場合は、内転筋の働きが弱まっている可能性があります。
また、座ったまま膝を内側に締める動作で力が入りにくければ、内転筋が十分に機能していないサインです。
Q.筋トレ中に腰が痛くなったらどうすればいい?
回答:すぐに中止し、痛みが続く場合は専門家に相談してください。
筋肉の疲労感や張りは自然な反応ですが、「鋭い痛み」や「片側だけの違和感」は注意が必要です。
動作の代償やフォームミスにより、内転筋の代わりに腰部に負担が集中している可能性があります。
まずは無理せず休み、改善しない場合は医療機関へ。
Q.運動初心者や高齢者でもできますか?
回答:正しいフォームを守れば安全に実践できます。
内転筋トレーニングは、仰向けや椅子に座った状態でも実施可能なものが多く、関節への負担も比較的軽いため、初心者や高齢者の方にも適しています。
反動を使わず、呼吸を止めずにゆっくり行えば、無理なく続けられます。
Q.どのくらいで効果を実感できますか?
回答:2〜3週間ほどで変化を感じる方が多いです。
個人差はありますが、内転筋は感覚がつかみやすく、トレーニングの効果が比較的早く表れる部位です。
早ければ2週間程度で「歩きやすくなった」「姿勢が安定した」と実感する人もいます。
継続することでさらに改善が見込めます。
まとめ|腰痛改善の第一歩は内ももから始めよう
腰痛の原因は、腰そのものではなく「内転筋の弱さ」にあるケースが少なくありません。
内転筋を鍛えることで、骨盤が安定し、姿勢や歩行も自然と整っていきます。ご紹介した筋トレはどれも自宅で手軽にできるものばかり。
まずは週2回から始めて、腰にやさしい習慣を積み上げていきましょう。
あなたの腰痛対策は、内ももから変わります。今日から一歩を踏み出してみませんか?